「高濃度乳房」って何?

「高濃度乳房」って何?
 乳房は主に乳腺と脂肪から成っています.撮影されたマンモグラフィをみると,白い部分と黒い部分がありますが,白い部分が乳腺,黒い部分が脂肪を示しています.白い部分(乳腺)が多いほど,乳腺濃度が高いことになります.乳腺濃度は,乳腺と脂肪の割合や分布によって,『極めて高濃度』,『不均一高濃度』,『乳腺散在』,『脂肪性』の4つに分類(図)されていて,前者2つを高濃度乳房と呼んでいます.年齢の若い方ほど高濃度乳房の割合が多くなります.高濃度乳房は病気ではなく体質です.
 高濃度乳房ではそうでない場合に比べて乳がん(白く写る)の検出率が低く,マンモグラフィ検診の弱点となっています1).また,乳がんの発生率が高いことも知られています2).そこで高濃度乳房に対する対策について検討されていますが,以下の問題点が指摘されています.
・高濃度かそうでないか区別が難しい場合がある
マンモグラフィを見たときに高濃度か高濃度でないかの区別が難しい場合もあります.灰色を白に近い灰色か,黒に近い灰色とするかは明確なものではありません.そのため医師によってその評価が異なりがちですし,同じ医師でもそのマンモグラフィをみた時に評価が変わることさえあり得ます.
・高濃度乳房に対する適切な追加検査が不明
一般に超音波検査が普及していますが,その有用性についてはわかっていません.国内でJ-STARTという大規模な臨床試験が進んでいて,40代女性に対して,マンモグラフィ検診に超音波検査を追加した場合の効果について検証しています.その結果,超音波検査を併用した方が、より多くのがんを発見できましたが、がんではない良性のしこりも多く見つけてしまう結果となりました。また、中間期乳がん(検診では異常を認めなかったが,検診と検診の間で自覚症状で発見されるもの)が半分に減少しました.しかし,真の目的である死亡率減少効果がわかるのはまだかなり先になります.
・受診者への伝え方が統一されていない
高濃度乳房評価のあいまいさ,追加検査の種類と意義,高濃度乳房は病気ではなく体質であること,そのため追加検査は通常保険診療にならないこと,などを適切にお伝えする必要があります.検診結果を医師が口頭で伝える場合にはまだよいのですが,文書で伝える際には,誤解のないように記載しなければなりません.ただし,口頭での結果開示は,検診者数に対してかなりの専門医師の数が必要であり,また行政に大きな費用も発生するため一般に難しいと思われます.
・日本人では高濃度乳房が多い
そのため高濃度乳房の方を全員追加検査の適応とすると,膨大な数の検査が発生しまうことになり,現在の診療体制では相当に無理があります.

私たちは継続して高濃度乳房の問題に取り組んでいく予定です.


1) 笠原善郎: 高濃度乳房問題に関する現状と課題 -『対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言』について. 乳癌の臨床 32:283-90, 2017
2) Breast Cancer Facts & Figures (American Cancer Society)
https://www.cancer.org/research/

cancer-facts-statistics/breast-cancer-facts-figures.html