RadFan抜粋

Rad Fan(Vol.15 No.13 2017)に「乳がん検診の現状とこれから」について特集が組まれ,本検討会のメンバーで執筆しました.詳細は本誌を御覧ください.http://www.e-radfan.com/shop-radfan/61379/
ここでは,内容を抜粋して掲載します.

 

目次 Part1
医師が考える乳がん検診
 
序文 二宮 淳(二宮病院)  
CLINICAL REPORT 期待される追加検査と問題点 齊藤 毅
CLINICAL REPORT 対策型乳がん検診における高濃度乳房通知に対する対応 甲斐敏弘
CLINICAL REPORT 乳がん検診における諸問題と展望 矢形 寛
CLINICAL REPORT 乳がん検診における「高濃度乳房」問題について ─なぜ高濃度乳房が問題になったか─ 二宮 淳
目次 Part2 
診療放射線技師が考える乳がん検診
 
序文 田中 宏(公益社団法人埼玉県診療放射線技師会)  
CLINICAL REPORT 乳がん検診における術者育成の問題点と職能団体の役割 田中 宏
CLINICAL REPORT 超音波併用検診に向けての問題点と術者養成について 新島正美
CLINICAL REPORT 3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)における現状と高濃度乳房への応用 岡田智子
CLINICAL REPORT 乳腺密度とデジタル値の相関性 根岸 徹


期待される追加検査と問題点
日本赤十字社 さいたま赤十字病院 齊藤 毅
マンモグラフィによる乳がん検診では,高濃度乳房において病変が正常乳腺組織に隠されていることも少なくないことが知られている.加えて,高濃度乳房は乳がん発症の高リスク因子の一つであるともされており,追加検査の意義についての研究が行われている.マンモグラフィの弱点を補うためのモダリティとして超音波検査,トモシンセシス,MRI などが候補に挙がっている.それぞれ長所短所が存在するが,超音波検査が臨床の場で基本的検査として多く行われていて,簡便かつ非侵襲的であり最も注目されている.日本において,検診マンモグラフィに超音波検査を併用した場合の検診の成績を検証するJ-START試験が進行中であるが,乳がん検出率の上昇および感度の上昇という利点がある一方で,特異度の低下および外科的介入率の上昇という不利益が認められることも指摘されている.後者の2点については,両者の総合判定による診断を行うことにより多少とも改善するだろう.
がん検診の原則として,対象となっているがんの罹患者が多いほど検診の意義は高い.感度・特異度が良い検査であっても,有病割合が低いと,陽性的中率は低くなる.仮に乳がんに罹患するリスクが高いグループを選択し検診の対象とすることが出来れば,感度と特異度は同じであるとしても,陽性的中率は高まる.臨床的なリスク因子,合併症などの個人の状態,家族的な負荷の評価,既知の遺伝子解析情報などをふまえ,検診対象者を層別化しリスクと追加検査による負担とのバランスを考えていくことが求められる.また,乳房の大きさや硬さ,マンモグラフィ上の乳房の構成(高濃度乳房の有無など)などの対象乳房の個性の評価を追加検査の要否やその選択に反映させ,より合理的な検診を模索していきたい.
対策型乳がん検診における高濃度乳房通知に対する対応
新都心レディースクリニック 甲斐敏弘
高濃度乳房の通知に関してはさまざまな問題があることが指摘されている.高濃度乳房の判定が適切か否か,読影医間での判定の一致率は必ずしも高くはなく,特に高濃度と高濃度以外の境界を判断することは難しい.受診者への通知方法も明確に定まっていないため,誤解を受けるかもしれない.乳がん関連学会3団体から,「対策型検診において受診者に乳房構成を一律に通知することは時期尚早」との提言がなされていて,厚生労働省「がん検診のあり方委員会」でも継続的に議論,検討が行われている.一部の地域で実際に高濃度乳房の通知が開始されているが,現在のところ大きな問題は起きていないようである.しかし,通知後の検査体制の整備,乳房超音波検査できる施設,技師,医師の数やその質にも問題があり,課題は多い.

乳がん検診における諸問題と展望
埼玉医科大学総合医療センター 矢形 寛

乳がん検診の質向上のため,様々な取り組みがなされているが,多くの課題が山積していることも事実である.ここでは諸問題を挙げ,今後整備すべき点や展望について述べた.
・対策型検診と任意型検診
対策型検診は国が主導で行われるものであるが,各自治体で方針が一定していない.任意型検診はさらに統一性がなく,野放し状態である.幸いにして第三次がん対策基本計画では,任意型検診についても対策を立てていくことが決まっているので,期待したいところである.
・がん検診の意義と受診者の理解
受診者の多くは検診していれば大丈夫と思っている方が多い.またその不利益も理解していない.
・高濃度乳房
他項で述べられているため,詳細は割愛する
・フィルムマンモグラフィとデジタルマンモグラフィ
現在デジタルマンモグラフィが標準となっているが,有効な使い方を必ずしも学んでいない医師も多い.
・厚生労働省の通達と触診検診
厚労省では,既に視触診検診を推奨しない,との通知を出しているが,未だ行われている地域もある.
・検診結果の通知
通知には検診施設で1人1人に 説明する方法と受診者に文書を配送する方法がある.ぞれぞれ一長一短があり,今後より効率的かつ有効な方法を考えていく必要がある.
・マンモグラフィ読影の質
日本乳がん検診精度管理中央機構(http://www.qabcs.or.jp)が検診精度の質を保つための努力をしているが,必ずしも全国均一にはなっていない.読影能力の研磨が必要である.
・2次精査機関の質
検診で要精査となっても,精査機関が正確に診断できなければ意味がない,その精度管理が課題である.
・比較読影
検診の際に過去の画像と比較することで,無駄な要精査が減ることは自明であるが,多くの地域では実現できていない.しかし,できるできないの議論ではなく,どのようにしたら少しでも行えるかを検診機関は考えていく必要があろう.
・精査機関での マンモグラフィ再撮影
検診で要精査となった場合,精査機関でマンモグラフィは取り直しとなる.被曝は単純に2倍となり不利益の1つであろう.今後何らかの対策が求められる.
・ハイリスクグループの同定と検診体制
乳がんハイリスクグループでは,通常の検診体制では早期発見は不十分とされており,特別な体制を確立することが望ましい.ハイリスクの代表が遺伝性乳がん・卵巣がん症候群である.今後検診レベルで,ハイリスクグループの同定と検診体制を整備していくことが必要である.
・超音波検査による乳がん検診,超音波検査の追加
超音波検査はマンモグラフィの短所を補う優れた検査法であり,診療レベルでは普及している.しかし,検診ではエビデンスの欠如や精度管理の問題等から賛否両論がある.更に議論が必要である.
最後に
問題点はまだまだ多くあるが,これらを1つ1つ解決していく努力が求められる.
乳がん検診における「高濃度乳房」問題について ーなぜ高濃度乳房が問題になったかー
二宮病院乳腺外科 二宮淳

そもそも高濃度乳房とは乳房の構成の1つの表現であり,疾病を意味するものではなく,乳房内の乳腺実質の量と分布(脂肪の混在する程度)から判断される.通常マンモグラフィ画像で判定され,高濃度乳房は病変が正常乳腺に隠されてしまう危険度を示している.実際に構成別にみた乳がん発見感度は「不均一 高濃度」から「高濃度」となるにつれ下がることが明らかになっている.高濃度乳房は米国での「Are you dense?」運動が契機となり,その後国内でも新聞報道で一気にクローズアップされた.米国人Nancy Cappello氏は,マンモグラフィ検診で正常との通知を受けたにも関わらず,7週間後にステージ3cの乳がんの診断を受けた.その理由が高濃度乳房であったことを知り,「Are you dense?」運動を展開したのである.米国では既に多くの州で乳房構成の通知が法制化され,Dene breast notification lawと呼ばれている.
しかし,以下の問題が指摘されている.アジア人女性はもともと高濃度乳房が多い,読影者間の判定のばらつき,読影者本人の判定のばらつき,報告者間での判定方法の不一致などである.乳がん検診の他の問題と合わせ,日本の乳がん検診がより整備されていくことを期待したい.

乳がん検診における術者育成の問題点と職能団体の役割
公益社団法人埼玉県診療放射線技師会会長 田中 宏

超音波併用検診における術者育成に関する問題点
施設で行う超音波検査の多くは臨床検査技師が担当しているが,施設規模が大きくなるほどコメディカル部門間における他部門同士の技術習得は難しく,スキルミックスを進めることが容易ではないと聞く.個人の経験では,その理由に,診療放射線技師も臨床検査技師も専門家であり,自分が担当するモダリティに関しては深い知識を有しているものの,他のモダリティには疎い傾向がみられる.医師は診療で患者の問診から各検査を総合的に診て判定を行う.しかし,各技師は,自分の担当する検査に対しては責任をもって検査をするものの他職種が行う検査に関して積極的に関与するという姿勢はやや乏しいように感じる.

スキルミクスの勉強会の開催
診療放射線技師,臨床検査技師は「精度の高い乳がん検診」という一つの目標に向かっていることでは共通している.埼玉県では,マンモグラフィ,超音波検査,病理診断と一連の画像診断および確定診断の流れを,医師,診療放射線技師,臨床検査技師,その他の乳がん診療に携わる医療職種が集まり症例検討会を定期的に開催されている.この勉強会は医師とメディカルスタッフのコミュニケーションの構築やメディカルスタッフのモチベーション向上に極めて役立っていると聞いている.その他には,診療放射線技師会と臨床検査技師会が共催した勉強会も定期的に開催されている.技術的進歩という観点からはモダリティごとに最先端技術の勉強会も重要であるが,一つの疾患に対して,そこに関わる検査を複数の職種で検討することが,スキルミクスのきっかけになり,人材育成に繋がるのではないかと考えている.

マンモグラフィ検査施行時の課題
受診者は医師に聞けなかったことは,撮影を担当する診療放射線技師に聞くことが多い.乳がん検診精度管理中央機構における撮影認定技師のカリキュラムには乳房構成が含まれており基本的な知識は有しており,乳房構成に関する説明を診療放射線技師が医師と共同で行うことは十分に可能であると考える.
従って,説明内容や方法を医師と十分なコンセンサスをとり,統一化することが必要である.
マンモグラフィの精度を高めることは言うまでもないが,乳房超音波検査とのバランスや乳がん検診の総合的な流れを十分に把握することが重要である.マンモグラフィの担当者が乳房超音波を理解することで,より高い精度のマンモグラフィ撮影が期待でき,さらに乳房超音波検査担当者がマンモグラフィを理解することでより高い精度の乳房超音波検査が期待できる.マンモグラフィと超音波同時併用検診の場合,超音波検査はマンモグラフィを参照しながら検査を行うため,超音波検査を行う担当者もマンモグラフィ所見を参考にする必要がある.
埼玉県診療放射線技師会では,乳がん検診全体の流れを知り,法的に可能な範囲で多職種間の垣根を下げ,スキルミクスを推進していくことが,豊富な人材育成に繋がり,ひいては公衆衛生の向上に寄与するものと考える.

超音波併用検診に向けての問題点と術者養成について

埼玉協同病院 放射線画像診断科 新島 正美              超音波併用検診は主に任意型検診に用いられてきたが,近年,対策型検診においても乳腺濃度の高い40歳代への導入が期待されており,その役割は非常に大きい.ガイドラインも整備され,導入の準備も進んでいるが,マンモグラフィ併用検診と比較すると,まだいくつかの課題がある.1. 問題点(ハード面)(1) 装置の性能現在超音波診断装置は各メーカからさまざまな機種が販売されており,複数の装置を使用して検査を行う場合には装置間のグレード差や使用する探触子の差異により画質の差を生じる可能性があるため注意が必要である.また,空間コンパウンドや特殊フィルタ処理技術,エラストグラフィーなど手法や画像化の方法が異なり,評価方法も若干異なる場合があるので各々の特性を理解する必要がある.(2) 精度管理(機器)超音波診断装置におけるファントムを用いた精度管理は,マンモグラフィのように装置や画像の基準を決める目的ではなく,装置ごとの画像の経時的変化を管理するために行うために,一定水準の画質を常に提供できるようにする必要がある.2. 問題点(ソフト面)(1) 施行者の確保超音波検査は施行者のスキルの差が出やすい検査であり,乳腺疾患に関する知識及び検査に習熟した者が行うことが望ましいが,多くの検診を行うには人員が不足している.(2) 検査対象の確認超音波検査が有用ではない例では,不利益(要精査率が高く,陽性反応的中度が低くなる)が生じる可能性があるため施設によってこれらの説明を受診者にしっかり行った上で対象とするかを決める必要がある.(3) 検査の流れや読影,総合判定一施設方式であれば情報を共有しやすく大きな問題はないが,二施設方式の場合は先にマンモグラフィを行い,その結果を超音波検査施行施設で検査の際にMMG所見を共有できる同時併用方式が望ましい.(4) 精度管理(プロセス指標)術者は検査を行って終わりではなく,各施設における要精検率・精検受診率・がん発見率・陽性反応的中度などのプロセス指標をしっかりと分析するところまでが責任と考えている.そして,全国数値との比較などを検討することで施設のデータの偏りなどから課題が見えてくる.最後に,超音波併用乳がん検診は死亡率減少の効果はまだ確立されていないものの,これまでの経験から乳腺濃度の高い乳房やマンモグラフィ不適な受診者には有効な検査であると感じる.まだ課題は残るが,多くの術者が養成され,研修や講習会,認定試験などで得た知識や技術を多くの受診者にフィードバックし,乳がんの早期発見・早期治療に繋げていければと思う.

3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)における現状と高濃度乳房への応用日本赤十字社 さいたま赤十字病院 岡田智子

 3D マンモグラフィは乳房内のスライス情報を持つ.従来のマンモグラフィは乳房内の全組織に重なりが生まれる.乳腺の重なりを理解しマンモグラフィを読影,診断をしていた.しかし,不均一高濃度及び極めて高濃度と言われる高濃度乳房では乳腺の重なりも多く,乳腺自体の濃度が高いため乳腺内の病変を見つけることが難しい.そこで,3Dマンモグラフィと言われているトモシンセシス技術が有用になると考えられている.3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)とは現状ではトモシンセシス画像におけるガイドライン等はなく,精度管理方法,読影方法はユーザに一任されているのが現状である.しかしながら,診断精度としては腫瘤,構築の乱れ,FADなどの石灰化以外の診断精度を有意に改善すると言われている.当院におけるトモシンセシスの使用経験当院では,2017年1月に新病院への移転があったため,マンモグラフィ装置を1台新規導入することとなった.そこで,SIEMENS社製 Mammmomat Inspiration を2016年9月に新病院に導入.2017年1月より稼働となった.SIEMENS社製 Mammmomat Inspirationのトモシンセシスは振り角+25°〜-25°で2°動いて1枚撮影を25回行い,次に25枚のプロジェクション画像を逆投影法(FBP法)で再構成を行うといった方法で1 mm厚のスライス断面を得ることができる.振り角が大きいことでより薄いスライスを得られる.当院では腫瘤,構築の乱れ,FADなどに積極的にトモシンセシスを撮影している.石灰化は基本的にトモシンセシスでは撮影をせずに拡大spot撮影をしているが,皮膚の石灰化か乳房内の石灰化かを判定する際にはトモシンセシスの撮影は有用である.今回,トモシンセシスを使用開始する前に乳腺外科医とディスカッションをしており,医師の依頼がなくても2Dの撮影で必要と判断した場合,技師の判断でトモシンセシスの追加撮影を行っている.また,撮影モードとして,トモシンセシスのみの撮影と2D+トモシンセシスを同じポジショニングで一度に撮影できるモードが選択可能である.トモシンセシスで確認したい所見としては構築の乱れやFADなど2Dとの対比が非常に重要な所見が主になる.そのため,トモシンセシスのみの撮影を行うのではなく,2D+トモシンセシスの撮影を行うことが望ましい.しかし,ここで考慮しなければならないものとして,撮影時の放射線被ばくである.SIEMENS社製の2D+トモシンセシスでは,2Dの約1.5倍の線量が必要である.今後は,トモシンセシスの画像で2Dの画像を再構成できるようになる,もしくは逐次近似法などを用いてそもそもの撮影時の線量を減らせることが望ましいと考える.また,トモシンセシスの撮影ではスライス断面を観察可能なことから従来の撮影時のような圧迫が不要ではないかという考えもあるが,トモシンセシスでは構築の乱れを所見としてとらえられることが多い.全乳房切除術検体で,実際に圧迫を行ったもの圧迫なしで撮影した検体画像を提示する(図1).この画像では,圧迫を行っている検体ではしっかりと構築の乱れをとらえることが可能であるが,圧迫を行っていない検体では正常の乳腺と比較するとやや乱れは認めるものの,「病変がある」という前提で画像を見ていなかった場合に見逃してしまう恐れもある.このことから,トモシンセシスでも2Dと同様に,乳腺組織がピンと張るだけの圧迫は必要であることがわかる.  図1.圧迫による違い最後にトモシンセシス技術は従来の乳腺の重なりをスライスで観察することが可能になることから診断能が上がるということは先行研究でも十分に立証されている.しかし,全ての所見を拾い上げるというところまでではない.そもそも,それぞれの検査方法には得意不得意が存在する.つまり,それぞれの方法の得意な部分を理解し,補っていくことが必要である.そのためにも,撮影している診療放射線技師が総合的に判断できる能力を持つことが重要である.


乳腺密度とデジタル値の相関性
首都大学東京健康福祉学部放射線学科 根岸 徹
 現在,我が国において乳がん検診に推奨されている検査方法はマンモグラフィである.その得られた画像の乳腺濃度は,がんの発見率に影響を及ぼすと言われている.いわゆるdense breast(高濃度乳房=極めて高濃度+不均一高濃度)の問題である.特にマンモグラフィは石灰化や腫瘍に対する感度に優れているが,患者の乳腺組織が密である高濃度乳房であると検出感度が落ちる傾向にある.図1に各乳腺組織画像に模擬病変を加えた画像例を示す.過去に宮城県と福井県におけるがん登録情報と照合した検出感度では【極めて高濃度】33.3-51.1%,【不均一高濃度】68.3-68.5%,【乳腺散在】78.9-79.2%,【脂肪性】90.7-100%であり,高濃度乳房ほど検出感度が低下していた.また,高濃度乳房は発がんリスクの高い所見の一つとされているため,高濃度乳房の受診者には更なる検査(超音波検査やMRIなど)が推薦されている.これに対して2016年6月18日の第57回日本乳癌検診学会理事会にて議論がなされ,学会として対応すること,および関連学会とワーキンググループを設置し高濃度乳房の検討がされることとなった.
そこで乳腺密度を明確にするため,乳腺密度とデジタル値の相関性に着目した新しい手法が注目されている.この解析方法の一つとしてデジタルマンモグラフィで得られたデジタル画像より乳腺密度を算出する手法である.この乳腺密度を客観視するためのソフトウエアは世界16か国で導入されて120万人以上のデジタルマンモグラフィが解析されている.解析方法の原理はマンモグラフィで得られる2次元のデジタル画像を用いて,乳房圧迫厚やX線エネルギー(管電圧やX線管ターゲットの種類と付加フィルタの組み合わせなど)から3次元解析を行っている(図2参照).乳腺の体積・密度など乳房全体の情報や圧力(kPa)の情報から客観的に解析を行うことで乳腺密度評価が自動表示される.このデジタル値を用いた乳腺密度の相関は良好であるとの報告もなされている.
このソフトウエアの出現により客観的に高濃度乳房を判別可能になってきたが,従来の視覚評価による【乳腺濃度】とデジタル値で得られた【乳腺密度】との相関性など様々な問題点も挙げられている.そのため改良の余地はあるようだが,乳腺密度の分類を客観的に行える時代がすぐそこまで来ているようである.今後さらなる乳腺構造に対する高精度の弁別能を有したシステムが開発されてくると考えられる.

図1 乳房の構成(乳腺密度)

図2 デジタルマンモグラフィの3次元解析(MLO)

図3 デジタルマンモグラフィの3次元解析(CC)